でんおのブログ

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威吹物語

【創作パロディ】もしもかぐや姫の美しさがゼロだったら

投稿日:2019年6月25日 更新日:


童話:かぐや姫の婚活(威吹電男 作)

むかしむかし、『竹取のおきな』と呼ばれる、おじいさんがいました。

ある日の事、おじいさんが山へ行くと、一本の竹の根本がぼんやりと光り輝いてました

「おや? 何と不思議な竹だろう」

おじいさんは、その光る竹を切ってみました。

すると竹の中には、小さな小さな女の子が、あたりに光を放ちながら、ちょこんと座っていたのです。

「なんとかわいい子じゃ。きっとこの子は、天からの授かり物に違いない」

子どものいないおじいさんは、大喜びでその女の子を家に連れて帰りました。

 

「まあ、まあ。なんてかわいい女の子でしょう。おじいさんの言う通り、この子は天からの授かり物に違いありませんわ。」おばあさんも大喜びです。

おじいさんとおばあさんは、その女の子を自分の子どもとして大切に育てることにしました。




ーーーーーーーー

女の子が家にやって来た次の日から、不思議なことに、おじいさんが竹を取りに行くと、竹の中に’’諭吉’’がぎっしりつまっていることが何度もありました。

おかげでおじいさんの家は、たちまち大金持ちになりました。

おばあさんは突然増えたお金の扱いに困ってしまいましたが、おじいさんは大喜びです。思い切って、ベンツのCクラスを購入しました。

「竹やぶまで毎日歩くのはつらいんじゃ。明日からはこれに乗っていくぞ。」

 

また不思議なことに、あの小さかった女の子はわずか3か月ほどの間にすくすくと育って、それはそれは大きな娘になったのです。

大きくなった娘は、とても美しい・・・と言いたいところですが、お世辞にも厳しいところがありました。おじいさんとおばあさんの期待を裏切り、はげしい「劣化」が進んでいきました。

それにもかかわらず、暗い中でも見える月のように、体から放たれる微量の光は消えることはありませんでした。

おじいさんとおばあさんは、娘の容姿を心配しつつも、自分たちをお金持ちにしてくれたことに大変感謝しているため、自信を持って生きてもらえるよう、『光り輝くお姫さま』ということで娘を『かぐや姫』と名付けました。

「姫」という名をもらったかぐや姫は、期待通り、自信に満ちあふれていました。ただ、その自信はあまり良くない方向へ進みました。

スマホを使って自撮りをし、その写真を毎日のようにインスタグラムにアップするのです。当然ですが、反応はよろしくありませんでした。

「こいつブサイクのくせに調子のってるわ」

「キモい」

「引っ込んでろブス」

散々の言われ様です。

しかしかぐや姫は、「こいつらは見る目がない」と言って気にすることはありませんでした。おばあさんが買ってきた高価な服を身にまといつつ、さまざまな角度から自分の顔を撮影し、投稿を続けました。

おじいさんとおばあさんは、インスタたるものがよく分からないので、かぐや姫の投稿に口出しすることはありませんでしたが、スマホばかりいじっているかぐや姫を心配そうに見つめていました。

「かぐや姫からもブルーライトは出ているのでしょうか」おばあさんはそんな言葉をもらしました。「見ていると目が疲れてしまいますわ」

「なあに、余計な心配はしなくていい。そんなに見守らなくても、彼女はおそらく一人でも生きていけるだろう」おじいさんはそう返しました。

 

しかし、その期待を裏切るかのように、かぐや姫はついに「結婚したい」と言い出しました。

おじいさんとおばあさんは困ってしまいます。

本来であれば、そろそろ彼氏の一人や二人いてもおかしくないころですが、かぐや姫にそんな気配はありません。

「まずお付き合いする人を見つけねばならぬな。」

おじいさんは、かぐや姫に婚活パーティーを勧めました。しかし、かぐや姫の反応はいまいちです。

「私、こうして毎日顔をアップして、求婚してくれる王子様を待ってるのに、そんなめんどくさいとこに行かなきゃいけないの?」

どうやらこのかぐや姫、ブサイクだけにとどまらず、出不精のようです。

「なあかぐや姫。お前は家にいても結婚相手は見つけられないんじゃ。自ら出向いて、王子様を探しに行かないと」おじいさんはかぐや姫を説得しました。「お金持ちアピールでもしておきなさい」

かぐや姫は納得がいかないようでしたが、このままではまずいと思ったのか、ようやく婚活パーティーに行くことを決めました。「まじだるいわ~」

 

婚活パーティーには、多くの若者が集まっていました。その中でも特に目立って熱心だったのが、次の5人の王子たちです。

彼らは名前を、

  1. 武田哲哉(たけだてつや)
  2. 山中信也(やまなかしんや)
  3. 林治(はやしおさむ)
  4. 北野剛(きたのたけし)
  5. ダルビッシュ優(だるびっしゅゆう)

と、言いました。

みんな身分がとても高く、そしてお金持ちです。

かぐや姫は、彼らのことが気になりましたが、彼らの周りには既に大勢の女性ファンが集まっていました。

「どれも素敵な方たちだ」武田氏は言いました。選びかねた彼はついに、

「個別でお話がしたい。おひとりずつ順番にお願いします。」

そう言うので、かぐや姫は「チャンス!」と思い、すばやく女性たちの列に交じって並びました。

一人あたり3分ほどの会話を交わしながら、ずんずんと列が進みます。

やがてかぐや姫の番になりました。軽い自己紹介をした後、かぐや姫は、自分が竹から生まれた特殊な存在であること、お金持ちの家でひたすらのんびりしていることなどを話しました。

しかし、武田氏には全く響きません。そもそも言っていることが意味不明で、信じられないのです。竹から生まれたって何???

他の4人も同じでした。

(この人は顔だけでなく頭の中もファンタジーなのかよ。無理だ、別の女性にしよう。)

王子たちは全員、別の女性とカップルになり、帰って行きました。

誰ともカップルになれず、取り残されたかぐや姫は、非常に悔しがり、男性たちを恨みました。

おじいさんとおばあさんはこれまた困ってしまいました。

 

さて、そうしているうちについに、かぐや姫のインスタグラムに一人の男性からメッセージが届きます。

『あなたの美しさに心を奪われました。ぜひ一度お会いしたいと思います。』

おじいさんとおばあさんはこれを聞いて、内心では変わった人もいるもんだと思いつつも、素直に大喜びしましたが、かぐや姫はそのような様子は全くなく、

「めちゃくちゃブスだし、金持ってなさそうだし、私には無理」と言いつつ、

『ごめんなさい。私はネットで知り合った方には会わないようにしているんです。』と、お断りをしたのです。

相手は優しい人だったので、無理に会おうとすることはせずに、そのまま連絡は途絶えました。

「こりゃ結婚できないわ・・・」おじいさんとおばあさんは呆れてしまいました。




数か月が経ちましたが、あれ以来、かぐや姫に近づく者は現れることはありませんでした。

その一方で、だんだんと知名度を上げている者がいます。

「竹取りのおきな」にしてベンツの車持ちという、おじいさんです。

低所得な職業として有名な「竹取り」ですが、これ一本ではベンツどころか国産の車ですら買うことが難しいのが普通です。

人によっては、副業としてブログやアフィリエイト等のネットビジネスをしていることもあります。それでも、そこで成功する者はごくごく一部で、ほとんどの人は子ども一人育てるのにも精一杯という状況です。車は本当に余裕のある人だけが買うものなのです。

ところが、おじいさんは一応ブログはやっていましたが、「今月取れた竹がこちら」とかいう記事を月1で投稿しているだけで、ほとんど収益にはなっていませんでした。

それにも関わらず、竹の中から見つかるお金をどんどん収得していったものですから、生活は大きく変わったわけです。

おじいさんはさすがに「竹の中からお金が!」とかいう投稿はしたくなかったので、隠していました。他の人にも取られてしまうと思ったからです。

しかし、ベンツを買った時点で、お金持ちになったことは隠せるはずがありません。たまたま会った竹取り仲間に乗っているところを見られ、質問攻めにされてしまったのです。

おじいさんは何とか「宝くじに当たったんだ」とごまかしました。

それからというもの、おじいさんは「ベンツのおきな」と呼ばれるようになってしまいました。

テレビ班が取材に来ることもありました。おじいさんは全て断っていましたが、かぐや姫はそれを見て非常に悔しい思いをしておりました。

「なにあいつばっかりチヤホヤされてんの・・・」

ベンツのおきなは、お金持ちになっても竹取りを続けていましたが、とうとうめんどくさくなってしまいました。

「これだけお金があればもう死ぬまで苦労はしないだろう。わしは働かないぞ」

そう言って、次の日からおじいさんは竹取りには行かず、代わりにゴルフに行くようになってしまいました。

おばあさんは心配です。たしかに、自分たちの残りの寿命は長くありませんが、かぐや姫を育てるのにお金は必要です。それが今ある分だけで足りるのでしょうか。

当のかぐや姫はというと、おじいさんが働くなくなったことには口を出さず、相変わらずひたすらインスタグラムやツイッター、そしてYouTubeに明け暮れていました。

かぐや姫の自撮り投稿があまりに続くので、彼女もSNS上では徐々に有名になってきました。

「ブス」以外にも「マジ根性あるわ」「なんか体光ってね?」などのコメントが多数つき、男性からのアプローチこそないものの、かぐや姫はインフルエンサーになった気分で、満足していました。

 

それから3年の月日がたった頃、ついにおじいさんは、

「お金がなくなってきた・・・」と言い出しました。

あんなにたっぷりあったお金は、日々の生活代とゴルフ代にどんどん消えていったのです。

しかも、おじいさんは生活リズムとともに体調を崩し、寝込んでしまいました。これでは竹取りも再開できません。

おばあさんとかぐや姫はあきれ顔。

かぐや姫はここでついに決意します。

「私、YouTuberになるわ。」

そういって、かぐや姫はスマホで動画を撮影し始めました。

内容は、「貧乏人竹取りのおきながわずか数か月でベンツのおきなになるまでの経緯」です。

そもそも竹取りのおきなが私を見つけたことがきっかけで、そこから竹の中からお金を発掘するようになり、お金を貯めていったという話です。そして、かぐや姫はここで、今まで隠していた自分の素性を全て話します。

自分は実は月の住民であること、地球で暮らしたかったために、竹の中にワープし、おじいさんに見つけてもらえるようにしたこと、生活の資金として同じく竹の中にお金を送金してもらっていたこと、今度の十五夜に月に帰る予定になっていることまで、全て話しました。総長20分のトーク動画です。

その動画を投稿し、おじいさんとおばあさんにも見せると、二人はびっくり仰天です。

「お前、いなくなってしまうのかね」

「寂しくなるわ」

なんせ竹から生まれてくるし、普通の人が20年かけて成長するところを3か月で終えちゃうし、体から光出てるし、めちゃめちゃ引きこもってるし・・・まあ人間じゃないと言われればそうでしょうねといったところですが、3年以上も見守り続けてきたかぐや姫とお別れするのはやはり寂しいのです。

おじいさんとおばあさんは、かぐや姫が月の都に帰るのを、何とか引きとめようとしましたが、

「滞在期限は決まってるから無理。」と、かぐや姫は冷静に答えました。

一方、YouTubeに投稿されたその動画の再生回数は半端じゃありませんでした。

世間では既に有名となっていた「ベンツのおきな」と「謎の勘違いブス」の真相が明らかになったことで、大きな反響を呼びました。

おじいさんたちの家には動画の再生による広告料がどっと流れ込みました。

「かぐや姫、よくやった。」おじいさんとおばあさんは喜び、かぐや姫を褒めたたえました。

 

十五夜の夜、3人はお酒とともに最後のお別れ会をし、これまでの思い出話を語りました。

話していたのはほとんど酔って気分の高まったおじいさんでしたが、残るおばあさんとかぐや姫も、話を適当に聞き流しつつお酒を楽しんでいました。

 

やがて月が明るさを増し、空が真昼の様に明るくなりました。

すると雲に乗った月の都の迎えたちが、ゆっくりとゆっくりとかぐや姫の屋敷へとやってきたのです。

おじいさんとおばあさんはその場に立ち尽くしました。

かぐや姫は静かに庭に出ると、いつの間にか美しい天女の羽衣を身にまとっていました。

「お父さま、お母さま、これでお別れでございます。これからは月を見るたびに、わたくしのことを思い出してください。そしてこれは最後のプレゼントです」

そう言ってかぐや姫は、おじいさんとおばあさんに高性能のカメラとパソコンを渡しました。「これからは動画の時代です。これを使って、YouTuberとして活動してください。」

「お前・・・・・・」

おじいさんとおばあさんがあっけにとられているうちに、かぐや姫は天女の羽衣で月の都のお迎えたちのところへ行くと、そのままお迎えたちと一緒にゆっくりと夜空へのぼって行き、月の光の中に消えてしまいました。

 

それから数日後、おじいさんとおばあさんは喪失感からひどく悲しみ、食欲は減衰しました。

おじいさんは竹取りの仕事を再開しましたが、お金の詰まった竹は見つかることなく、二人は再び貧しくなってしまいました。

「そうだ、かぐや姫の言う通り、YouTuberにならなければ。」

おじいさんはついに、「ベンツのおきな」という名のもと、竹取りYouTuberとして活動を始めることにしました。

ブログで書いていたような、竹を紹介するだけはでなく、いい竹を見つける方法、竹を使ったグッズの作り方、おばあさんにドッキリしかけてみたなど、幅広く次々とネタを考え、おばあさんと協力しながら動画を撮影していきました。

「わしはセンスあるかもしれないぞ。」おじいさんはご機嫌です。

チャンネル登録者数はどんどん伸び、あっという間に5万人に到達しました。

こうして、二人は安定した収益を得ることで死ぬまで裕福に暮らしたということです。

おわり

 

あとがき:みなさまへのメッセージ

YouTuberは儲かります。

ただし、うまくいけば。



-威吹物語

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威吹 電男(いぶき でんお)

1995年生まれ。大学で農学(畜産学)を専攻し、修士卒で食品業界に就職。
サラリーマンをしつつ副業として情報発信を行っています。

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